法人番号:法人に番号は付与されるのか

個人の脱税防止のために番号が付けられるようですが、それであれば法人に対しても番号を付与しないと不公平だと思います。法人には同様の制度は無いのでしょうか。

マイナンバー法に基づき、法人にも「法人番号」が付与されます。これまでも会社等法人番号が存在はしていましたが、いわゆる登記簿がある会社のみで、行政機関や権利能力の無い社団等には付与されていませんでした。マイナンバー法ではこれらの法人・準法人にも一斉に番号を付与し、番号で法人を特定できるようになります。

法人番号:個人番号との違いは

法人に法人番号が付与されるとのことなのですが、この番号も、個人のマイナンバーのように厳格に保護しないといけないのでしょうか。基幹システムに法人番号を収容するとセキュリティレベルやアクセスコントロールを変えないといけないのではないかと心配しています。

個人番号と法人番号の規制上の大きな違いは、個人番号には厳重な保護義務とその保護義務違反に対する罰則が科せられているのに対して、法人番号には保護義務がほとんど存在しないということです。これは制度として、個人番号はプライバシーに直結することから、民間での利用を極力制限する方向であるのに対して、法人番号は、民間による自由な利用を促進する方向であることに由来しています。

個人番号:個人番号で構築されるネットワーク

マイナンバー制度が導入されると、マイナンバーで個人を管理するデータベースが政府に作られるということでしょうか。管理社会になりそうで怖いです。

現時点での政府のアナウンスに基づく限りは、マイナンバー制度が導入されたからといって、マイナンバーで管理される単一のデータベースが構築されるわけではありません。現時点では政府の省庁、年金機構等がそれぞれの目的のためのデータベースを保持している訳ですが、それぞれのデータベースの中の各個人の情報に、マイナンバーが付け加わるという形です。そのため実態としてのデータベースが分散管理されている状況は今後も変わりません。ただ各省庁のデータベースと接続することとなる情報提供ネットワークが2017年から稼働します。これはある省庁からある省庁に対して、個人番号をキーにして、個人情報の照会をかけられるようにするシステムです。
抽象的に見ると、情報提供ネットワークを介することによって国単位の巨大な個人情報データベースが構築されることになるともいえます。そのため情報提供ネットワークには厳格なセキュリティ保護措置がかけられ、悪用には重い罰則が科されることになっています。また不正利用防止のための事前アセスメントも実施され、その内容が情報保護評価書として公開されることになりました。

利用:企業として利用を拒否することはできるのか

個人番号を漏洩させるとプライバシー侵害になってしまうのであれば、そんな情報はそもそも扱いたくありません。これまでと同じように個人番号など遣わずに会社を運営したいのですが可能でしょうか。

個人番号の利用は企業の法律上の義務になりますので、企業の一存でこれを回避することはできません。企業の側からするとこんな制度を作って勝手に義務ばかり課せられるというのは納得のいかない点も多いでしょう。ただ脱税や社会保障不正が多発している現状では、こういった制度の導入の必要性が高く、企業として協力することになるのはやむを得ないでしょう。

利用:従業員が提出を拒否した場合

企業がマイナンバー法に準拠して法定調書の提出をしようとした場合、まずは従業員からマイナンバーを教えてもらわないといけないということになると思います。ただ会社のことが信頼できないとか、この制度がきらいだとか、通知カードを無くしたとかで、番号を提出しない人が必ず出てくるはずです。こういった場合でも企業が法律違反を犯したことになってしまうのでしょうか。

マイナンバーの利用義務はマイナンバー法では無く、法定調書の提出を義務付ける各法令に基づきます。現在の所、企業側として従業員に対して提出をちゃんと促したけれども、それでも従業員が開示をしない場合に、企業が何らかの制裁を受けるといったことは無いとされています。ただ企業が収集していないから無いのか、本人が拒んだから無いのかをちゃんと区別できるよう記録を残しておかないといけません。

個人情報保護法との関係:個人番号は個人情報ですか

個人番号は個人情報保護法の個人情報として扱わないといけないのでしょうか。具体的には利用目的の開示等の義務が課されるかどうかが知りたいです。

個人番号は個人情報保護法上の個人情報に該当します。個人情報保護法上の個人情報とは、個人を特定できる情報または他の情報と照合することによって容易に個人を特定できる情報です。企業が個人番号を従業員から提出を受ける際には、本人確認もしているわけですので、その番号が誰の番号なのかを確実に照合できる形で保有していることになります。ですので個人情報保護法も適用されますから、マイナンバー法には無いけれども個人情報保護法には規定されている義務も、マイナンバーに関する義務となります。

利用拒否:利用を望まない個人が付番を拒否できるか

私はマイナンバー制度に反対しているので、番号を付けられることも拒否したいのですが可能でしょうか。

マイナンバーは2015年10月頃から各自治体から個人宛に通知が始まります。これは個人の否応なしに実施され、個人としていくら番号付けされたくないと国や自治体に申し立てたとしても、強制的に付番され、通知されることになります。自治体から送られてくる通知カードを廃棄したとしても、個人番号は住民票記載事項ですので、記録は無くなりません。
もしマイナンバー法に違憲訴訟が提起されて無効となれば拒否できるのかも知れませんが、その見込みはまず無いといっていいでしょう。

収集:個人番号の収集可否

マイナンバーは国民全員に付けられるということですから、これを収集すれば、消費者マーケティング上非常に有益なデータベースを作ることができると思います。本人の同意の下で集めるのであれば問題無いと考えてよいでしょうか。

個人番号であるマイナンバーは本人の同意があっても収集禁止が大原則です。マイナンバー法上、マイナンバーを集めてもいい場合が限定して記載されていて、これ以外の目的でマイナンバーを収集するとその時点で違法です。更に言うと、マイナンバーを提出してくれと求める事ができる場合も限定されています。要は、マイナンバーは民間での利用は禁止されているということです。制度は3年ごとに見直されることになっていますが、社会でのマイナンバー制度に対する拒否感も強いことから、民間拡大はそうそう進まないと予想されます。

提供:自分の個人番号の提供

自分に付けられたマイナンバーを覚えやすいように、語呂合わせの達人に頼んで覚え方を考えてもらおうと思います。私のマイナンバーを教えてもよいですか。

マイナンバーはたとえ自分の番号であっても、他人に教えることは禁止されています。教えてよいのは、税・社会保障等、法律でマイナンバーを使って提供してもよいと認められている分野だけです。一定の手続きを実施するために家族や代理人に開示することは認められていますが、そういった関係の無い第三者への開示はできません。

刑罰:マイナンバーの不正利用に対する罰則

マイナンバーの不正利用の罰則は重いそうですが、具体的にはどの程度の罰則が科せられるのでしょうか。

マイナンバーの不正取得や不正な提供は最大で懲役3年です。また業務として取り扱った個人番号を殊更に漏洩させた場合には最大4年の懲役ですのでさらに重くなります。
目安としては、刑法で横領罪の罰則が最大5年の懲役、暴行や脅迫が最大2年の懲役ですので、罪の重さとしては、暴行以上脅迫以下とイメージすればいいでしょう。