利用目的の明示 : ホームページで公開しておけば通知は省けるか

当社では個人情報取得の際にいちいち利用目的を通知するのは面倒なので、事前にホームページで公表しておき、個別の通知は省きたいと思っています。可能でしょうか。

個人情報保護法第18条1項では、原則としては個人情報の取得後速やかに利用目的の通知又は公表を行うものとされています。ただしあらかじめ公表している場合には、事後の公表又は通知が不要となります。なおどのような方法で公表を行えばいいのかについては法律に定めはありませんが、一般的にはホームページへの掲載は「公表」にあたると考えられています。 なお書面によって個人情報を取得する場合には、必ず予め利用目的を明示することが必要となっていますのでご注意ください。

利用目的の明示 : 取得する紙面上への記載が必須か

当方は旅行会社で、雑誌綴込みの葉書でカタログ請求を受け付けています。この葉書は情報を記載できるスペースが狭いので、個人情報の利用目的については、カタログを送付する際に、利用目的を記載した紙を同封しています。この取扱に問題はないですか。

書面で本人の個人情報を取得する場合には、あらかじめ利用目的を明示しなければなりません(個人情報保護法第18条)。事後の通知はこの条文に違反してしまいます。もっとも葉書にスペースがないのであれば、葉書がついている広告ページの方に記載するという方法でもこの条文をクリアすることができます。

目的外利用 : 会員登録の時に登録された電話番号への電話営業は可能か

当方はネットショップですが、商品を顧客に送付する際、顧客の電話番号も教えてもらっています。今回、新商品を発売するのですが、既存顧客の電話番号に電話をかけてセールスをすれば、かなりの効果が上がると期待しています。これは可能でしょうか。

顧客から注文を受ける際に、「提供を受けた個人情報を利用して新製品の情報を提供する」旨を利用目的として定めていた場合は可能です。しかしそう言った利用目的の定め方をしていないのであれば、新たな利用方法についての個別の同意を得られなければ、利用は禁じられます。これは個人情報保護法第16条1項で、あらかじめ定めた利用目的の範囲を超えた利用が禁じられているからです。なお近時は利用目的の具体化が求められていますので、「電話によって」というところまで記載しておく方が望ましいです。

特定の対象の単位:利用目的の開示は保有している個人情報の種類毎に行う必要があるか

当社では市販の人名録を購入して、営業活動に使用しています。購入した人名録はかなりの種類があるのですが、それぞれの人名録毎に、利用目的を特定及び公表する必要がありますか?

個人情報保護法上、個人情報の利用目的を特定(同法15条)する際の個人情報の単位については、特に具体的な定めがなされていません。しかし経済産業省ガイドラインにおいては、特定の対象となる単位という視点ではないものの、「利用する個人情報の種類又は入手先の事業者名等を特定することまで求めているわけではない。」とされています。したがって、利用目的を特定して文書化する際には、その中に、「人名録に記載されている個人情報」であるとか、「A社から入手した個人情報」といった記載を行う必要は無いということになります。そのためおよそ保有している人名録全体の利用目的を特定すれば、15条の特定を行ったといえることになります。そして18条の利用目的は15条の利用目的と同一です。したがって、実際に利用目的を公表するにあたっても、個別の人名録毎の利用目的の公表は必要ないという結論になるでしょう。さらに言えば、新たな個人情報をまとまった形で入手したとしても、従前の利用目的と同様であれば、その新たな個人情報について、改めて利用目的を公表する必要は無いということになります。

利用目的の特定 : ある個人情報を複数の目的で利用することは可能か

当方は下着メーカーで、近々大々的なアンケートの実施を予定しています。この情報を利用して個別セールスや最近の流行を分析する予定です。このようにある時点で一度に取得した個人情報を複数の目的で利用してもいいのでしょうか。

個人情報保護法第15条では、個人情報の利用目的の特定が要求されています。もっとも利用目的が一つでなければならないというわけではありません。きちんとした特定が行えるのであれば、複数の利用目的を定めても構いません。

個人情報の利用目的 : 範囲の広い抽象的な利用目的を定めてもよいか

当社では個人情報を様々な目的のために利用しており、収集の際に具体的な目的を定めておくことが困難です。例えば「お客様の満足度向上のために利用する」といった、解釈の範囲が広い目的を定めておくことは可能でしょうか。

個人情報の利用目的は「できる限り特定しなければならない」とされています(個人情報保護法第15条)。そのため概括的・包括的な利用目的の設定には問題があります。同法の17条の規定も相まって、取得時点で目的を特定できないようであれば、取得すること自体に問題があるという結論となるでしょう。 

利用目的の通知・公表:個人情報の取得を代行している企業は自ら利用目的を公表しないといけないか

当社は懸賞による賞品のPRを受託している企業です。依頼企業に代わって懸賞の受付を行いますが、一般消費者に対して当社の名前が出ることはありません。当社のような業務形態でも個人情報の利用目的の通知又は公表は必要でしょうか。また必要とすると具体的にはどのような方法をとればよいのでしょうか。

個人情報保護法18条は、個人情報取扱事業者に利用目的の通知又は公表を義務づけています。利用目的が明らかである場合などを除いては、この義務が免除されることはありません。そのため貴社の場合でも、この条文に従って個人情報の利用目的を通知または公表する必要があります。もっとも利用目的を通知するとなると、受託者である貴社の名称が明らかになってしまいますし、実務上も不可能でしょう。そのためインターネットのホームページで公表するのがもっとも現実的な方策と思われます。なお経済産業省のガイドラインによれば、利用目的の中に情報の取得源を含める必要はないとされていますので、利用目的を公表したとしても、受託先が公になることはありません。

名刺の利用目的の明示:名刺をもらうときあらゆる利用目的をそのときに話しておかないといけないか

名刺をもらうとき、もらった相手に今後年賀状を送付したいと思っている場合には、もらうときに「年賀状を送ります」と行っておかなければいけませんか。個人情報保護法18条2項の規定を読むとそのように解釈できるので心配です。

個人情報保護法第18条2項では、個人情報を書面等で取得する場合には、予め当該個人情報の利用目的を本人に明示しなければならないとされています。するとこの条文だけ見れば、名刺をもらう際に、年賀状を送る予定であれば、その旨を予め告げなければならないということになりそうです。しかし同条4項4号にて、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」には、同条2項は適用されないものとされています。社会通念上、年賀状その他の挨拶状を送ったり、その後に連絡したりするために名刺に記載された情報を利用することは、名刺が交換された際のもらった側の利用目的として明らかと言うことができます。経済産業省の個人情報保護法ガイドラインにおいても同様の解釈がとられています。もっとも、挨拶状の送付や単なる業務上の連絡の域を超えて、ダイレクトメールの送付を行ったり宣伝行為をすることは、名刺を授受の際に、利用目的として当然に明らかになっているものとはいえません。そのため単に名刺を受け取った場合には、ダイレクトメールを送付すると、利用目的の範囲外での利用となるでしょう。ダイレクトメールの送付等が予想される場合には、「田中一郎様でございますね。ご迷惑でなければこの名刺のご住所に当社の商品のご案内を送付させていただいてもよろしいでしょうか。」等と確認しておくべきことになります。

利用目的:登記簿から集めた情報は利用目的の通知が必要か

当方は不動産仲介業者です。売り主を捜したりするために、不動産登記簿から物件の所有者の連絡先を調べています。そして電話や郵便で連絡をとり、売却のご意思の有無を伺っております。事前に利用目的を通知したりできないのですが、このような営業方法は個人情報保護法上違法でしょうか。

個人情報保護法上、書面等で本人から個人情報を取得する場合には、事前に利用目的を明示することが要求されておりますが(同法18条2項)、不動産登記簿から情報を取得する場合にはこの規定は適用されません。すると利用目的については、個人情報の取得後遅滞なく、通知又は公表すればよいことになります(18条1項)。御社の場合であれば、例えばホームページに利用目的を予め掲示しておけばそれで足りることになり、この利用目的に沿って利用する限りは、違法ではありません。もっとも個人情報保護法上違法ではないといっても、不動産登記簿の情報をこのような形で使用されてしまうことに抵抗を覚える方も多いですから、所有者への連絡の際には、何らかの配慮が必要でしょう。

配送業務の受託:宛名印刷まで行う配送業務には個人情報保護法が適用されるか

当社は配送業務を受託しています。宅配伝票の出力のために、委託元より個人情報を預かります。また預かった個人情報に、配送日や問い合わせ番号を付加した上で、委託元に返却しています。これらのやりとりには個人情報保護法が適用されるのでしょうか。

御社の立場を前提とした場合、結論としては、一部個人情報保護法が適用されることになります。分析すると、まず、御社が個人情報保護法の適用対象たる個人情報取扱事業者に該当するか否かが問題となりますが、御社の業務内容であれば、5000件以上の個人情報データベースをお持ちのことと思われますので、該当することとなるでしょう。 次に委託元から情報を預かる際には、個人情報保護法の15条から18条までが適用されることになります。これらの規定については受託業務だからといって除外されるような例外はもうけられていません。すると預かった個人情報についてその利用目的を特定の上公表し、その利用目的の範囲内でのみ利用するという義務が課せられます。 最後に委託元に情報を返却する際には、同法23条の第三者提供の規制が適用されるかどうかが問題となります。御社が保有している情報は、委託元から御社に提供される際には同条4項1号(情報処理の委託)の規定を適用して、個々の本人からは同意を得ずに御社に提供されたもののはずです。するとここで言うところの委託元はそもそも「第三者」に該当せず、同条は適用されない、つまり、個々の本人から提供についての同意を得る必要はないということになります。御社の場合、返却の際には新たな情報が付加されていますが、これらの情報は独立して個人情報となりうるものではありませんので、やはり同条は適用されないでしょう。