音楽の公衆送信の手続きと著作権の有効期限:自演する楽曲をインターネットで公開することの可否

クラシックギターを練習中の者です。独学ですので練習の励みにするために、自分の演奏を録音して公開してみようと考えています。公開する曲は古い作曲家のものもあれば、最近のものもあるかと思います。気軽に聞いてもらいたいので、アクセスする人に料金を請求するつもりは毛頭ありませんが、アフィリエイト広告を貼り付けたりする可能性はあります。

御質問の件では、作曲家が作曲した楽譜を利用して演奏し、これを録音してインターネットサーバーに記録し、これを配信するという流れを取るかと思います。 作曲家が作曲した楽譜には著作権が認められています。そして著作権法上、著作権者には、公衆送信権・公衆送信可能化が認められています。これは著作物をインターネットなどで配信したり、配信が可能な状態にする権利です。 楽譜の著作権者以外がその楽譜なりこれを演奏したものの公衆送信を行うと、著作権を侵害することになってしまいます。そのため事前に著作権者から利用の許諾を得ることが必要です。 日本では多くの楽曲がJASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)により集中的に管理されております。JASRACが管理している楽曲であれば、JASRACのホームページ(http://www.jasrac.or.jp/)からオンラインで利用許諾を得る手続きを行うことができます。JASRACが管理する楽曲であるか否かについても、JASRACのホームページで検索が可能です。 現在のJASRACの使用料規定では個人が非商用によって配信する場合には1曲あたり月額150円の使用料が設定されています(曲数・ダウンロード形式・ストリーム形式などにより変動します)。ホームページに広告を貼り付ける場合には年額で6万円相当の使用料が必要です(これも配信形式などにより変動します)。詳しくはJASRACのホームページを参照してください。 JASRACの使用料規定においては個人利用の使用料の金額は商用の場合に比べてかなり低廉に設定されていますが、個人が気軽に支払える金額かというと、価値判断が分かれる部分かと思います。もっとも公開するプラットフォームによっては、このような手続きが不要となる場合があります。たとえばYoutubeはJASRACと包括契約を締結しています。この契約によりYoutube上で公開する限りにおいては、楽曲の著作権処理が不要となります。ユーザーの金銭負担も必要ありません。なおクラシック楽曲の場合は、既に著作権が消滅している場合が多く、その場合には著作権者又はその相続人からの許諾は不要です。著作権は原則としては著作者の死後50年で消滅します。たとえばギターの練習曲を多く残しているフェルナンド・ソルは1839年に没していますので、現在は既に著作権は消滅しています。なお注意すべきなのは、編曲者が別にいる場合には、編曲者にも著作権が発生していますので、編曲者の著作権が存在しているか否かも確認する必要があります。たとえば巨匠アンドレス・セゴビアがバッハのバイオリン曲であるシチリアーナをギター用に編曲した楽譜が存在しています。バッハは1750年に没していますので、シチリアーナをバッハの楽譜でバイオリンを使って演奏する分には著作権を考慮する必要はありません。しかしセゴビアの編曲による楽譜にはセゴビアの著作権が発生しており、そしてセゴビアが没したのは1987年ですので、セゴビアの相続人が有している著作権はまだ消滅していません。そのため、セゴビア編のシチリアーナを公衆送信するには、セゴビアの相続人から許諾を得る必要があります(実際にはシチリアーナはJASRACが管理しているようですので(作品コード 0S0-5441-8 SICILIANO)JASRACにおいて手続きを行うことになります)。 なおインターネットによる配信で公表するのではなく、ストリートでの演奏で練習成果を公表し、聴衆から対価を得ないのであれば、権利者から許諾を得る必要はありません。これは著作権法38条で非営利・無償・無報酬の場合には、著作物を公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができるとされているためです。逆に言えば、インターネットによる配信は公衆送信となり、この38条に公衆送信が含まれていないため、たとえ無償・非営利であっても、著作権者の許諾が必要ということになります。

損害賠償無しのシステム開発な日常:ちょっとした

ちょっとした買い物があって、事務所の近くのライフへ。ポンタカードはお持ちですかと聞かれたのでポイントをつけてもらったのだけれど、ポイントを確定させるためには店内のキヨスク端末で処理をしないといけないとのこと。面倒すぎる駄目システムなのだけれど、こんなことになってしまったのには何か理由があるはず。最近この手の契約書のチェックが多いので色々と連想してしまいます。“””

業務委託と著作権の帰属:契約書に取り決めが無い場合誰に帰属するのか

当社はシステム開発会社です。ある開発案件で、著作権に関する取り決めが全く書かれていない契約書を使用して契約を締結していました。このとき、著作権は、当社と委託者とどちらに帰属するのでしょうか。

契約書上での取り決めが欠落している場合には、法律と当事者間の合理的な意思を解釈することになります。 著作権については法律上、創作した者またはその使用者に帰属することとされています。そのため開発委託の場合には、原則として受託者に著作権が帰属することになります。これに対し、契約書外(口頭など)で著作権を委託者に移転させる旨合意していたり、継続的な取引において常に著作権を移転させていたという事情がある場合には、著作権が移転していると解釈する余地があります。 なお著作権が受託者側に帰属する場合には、開発委託をしたことから当事者の合理的な意思を解釈すると、著作権の移転を留保する以上は、委託者に開発成果物の使用を許諾するという意思があったということになります。そして成果物が委託者特有の業務を反映したものであったり、委託者の企業秘密を含むようなものの場合には、独占的な使用許諾、つまり他の第三者には使用許諾しないという意思の下に開発されたと解釈される可能性が高いでしょう。

ホームページの雑誌掲載:スクリーンショットの無断掲載は著作権侵害か

私が運営しているホームページのスクリーンショットが、私に無断で雑誌に掲載されました。匿名で運営しているのですが、この雑誌を出版している会社を訴えることはできるのでしょうか?

著作権侵害となる場合には訴えることが可能ですが、著作権侵害と言えるためには、①ホームページに著作権が発生していること、②著作権が発生している部分が掲載されていること、③引用の要件を満たしていないことが必要となります。 まず①著作権が発生していると言えるためには、ホームページのデザイン、掲載している文書、写真、画像に創作性(オリジナリティ)があることが必要です。ありふれたデザインやコピーでは創作性が認められません。次に②創作性のある部分が創作性を保持したまま転載されている事が必要です。たとえば創作性のある文書でも、掲載の際に縮小されていて読めなくなっている場合には、複製されたと主張することが困難です。そして③著作権法上、引用(第32条)の条件を満たしている場合には、合法的に複製が可能ですので、引用に該当していないことが必要です。引用の条件として、主従関係、必然性、明瞭区分性や出所の表示が必要とされていますが、雑誌で紹介されたという場合には、主従関係以外の条件は、通常は満たしている場合が多いでしょう。主従関係とは、文脈や分量からみて、引用する側が主たる関係にあるかどうかを判断します。ホームページを紹介した雑誌の記事が、ホームページの写真に若干のコメントを付しただけの場合には、主従関係があるとは言えないでしょう。 これらの条件を満たした場合に初めて訴えることが可能となります。具体的には民事的には損害賠償請求と差止が可能であり、刑事的には複製権侵害による告訴か可能となります。

属地性:外国企業が外国で登録している権利は日本で行使できるのか

属地性:当社は米国でカラーコーディネイトに関するコンサルティングを行っている会社です。米国で商標登録されている当社のキャッチコピーや、当社が独自に創作したビジネスのコンセプトが、日本のある企業に盗用されているのを発見しました。この会社を訴えて、盗用を止めさせたり、損害賠償をすることはできますか。

日本において知的財産権を主張するためには、日本の各知的財産権に関する各種法律に定められた条件を満たす必要があります。例えば米国で商標権を取得していたとしても、日本国内で商標を申請、登録していない場合には、商標権は一切認められません。おそらく御質問のキャッチコピーも日本では商標登録されていないものと思われますので、日本で商標権を主張することはできません。またビジネスのアイディアそのものは、ビジネスモデル特許として登録されていない限りは、原則としては知的財産権によって保護されません。もっとも、知的財産権の中でも、著作権や不正競争防止法上の営業秘密保護や著名表示・商品形態保護は事前の登録手続き等が不要です。御質問のケースでは、これらによる保護が可能かどうかを検討すべきでしょう。著作権によって保護されるためには、まず①キャッチコピーやビジネスのコンセプトが、文書や図案として具体的に表現されている必要があります。②そしてこれらの表現内容がありふれたものでなく、創作性(オリジナリティ)を有していることが必要です。キャッチコピーについては、文書としてかなり短いでしょうから、著作権が認められるためには、相当の創作性が必要でしょう。ビジネスのコンセプトについては、これが宣伝文書やマニュアルとして制作されている必要があります。なおこれらのキャッチコピーやコンセプトが日本語に翻訳されていても、著作権者には翻案権という権利が認められています。そのため著作権者に無断でした翻訳も著作権侵害となります。著作権侵害と言える場合には、損害賠償や差止請求が可能です。また不正競争防止法上の営業秘密に該当する場合にも差止や損害賠償請求が可能です。営業秘密に該当するためには、①秘密として管理されている情報であって、②実際に一般的には知られておらず、③営業上有用な情報であることが必要です。キャッチコピーについては公に宣伝している内容ですので営業秘密には該当しないでしょう。一方、ビジネスのコンセプト、ノウハウについては、これを秘密として管理してきた実績があるのであれば、営業秘密に該当する可能性があります。さらに不正競争防止法では、著名性を有している商品・サービスの名称や発売されて3年以内の商品の形態が模倣された場合には、模倣した者に対する差止、損害賠償請求権が認められています。なおこれらの不正競争防止法上の権利は容易には認められないことが多いですから注意が必要です。

教育目的の複製:教育現場ではコピーすることは可能か

大学の研究室などで複数の学生が使用することが必要な教科書を、コピーして利用することは違法ですか?

著作権法第35条では、複製権の例外として、授業を受ける者が授業で使用するために必要と認められる限度で、公表された著作物を複製できるとされています。ただしあくまでも「必要と認められる限度」内であり、著作権者の権利を不当に害さないことが必要です。実際にどの程度の複製が許されるかについては、議論が分かれており、明確な結論があるわけではありません。 複製対象となる著作物のうちの複製される割合ですが、丸ごと複製することが違法であるという点については異論がありません。ではどの程度まで複製できるかという点については、放送大学客員教授の作花先生(この分野の大家です)の見解では、小規模なゼミ生程度の範囲に配布するのであれば、ある程度のページ数でも許容されるが、相当数の受講者に配布する場合には数ページ程度に限定されるとのことです。また教科書やワークブックなど、本来、生徒の数だけ購入されることが予定されている著作物については、複製は原則として違法となります。

アダルトグッズ販売:アダルトグッズをネット販売することは可能か

アダルトグッズをネットショップで販売しようと考えています。法律上問題はありますか?

まず物販をネット上で行うことになりますので、特商法表示等の一般的なネットショップについての法律規制をクリアする必要があります。 次に直接的な法令上の要求は見あたりませんが、商品の性質上、訪問者の年齢を確認する画面を設けておくべきでしょう。 また販売しているアダルトグッズが男性や女性の性器を模した物である場合、そもそも販売自体がわいせつ物頒布罪(刑法175条)に該当する可能性が高いですが、商品写真をWeb上に掲載すれば、わいせつ図画公然陳列罪にも該当し、違法性が高まりますので注意が必要です。

アダルトサイトの運営:会員にのみ公開するのであればモザイク無しでもよいか

アダルトサイトを運営しているのですが、アクセス数増加のための企画として、会員登録をしてくれた人にだけ、いわゆるモロ画像を提供しようと考えています。特定の人にしか見せないので問題ないと考えていますが、大丈夫でしょうか。

日本でいわゆるモロ画像を配信すると、わいせつ図画公然陳列罪によって処罰されることになります。ID・パスワードなどのアクセス制限措置によって画像が配信される対象が限定されている場合に、「公然」と陳列したかどうかが問題となります。この点先例は見あたりませんが、現在の捜査当局及び裁判所の考え方と方向性からすると、たとえ会員制のサイトであっても、「公然」性があり違法と判断する可能性が高いと思われます。そのため会員制という体裁を取ったとしても、モロ画像を配信すれば摘発されるリスクは大きいと判断すべきでしょう。