当社は建設業を営んでおり、事業の遂行に際しては多くの下請業者を使用しています。労災保険の加入にあたり、請負事業ですので、下請労働者も含めて労災に加入しています。保険料の算定のため、下請業者には各労働者の賃金の内容を教えてもらっているのですが、個人情報保護法上問題は発生しますか?
賃金の情報がそれが氏名を伴っている場合には当然に個人情報に該当します。多くの場合賃金情報はデータベース化されているでしょうから、これを他の事業者に提供する場合には、法律上の原則からすると本人の同意が必要となりそうです(個人情報保護法23条)。 もっとも請負事業を一括して取り扱わなければいけないのは、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第8条の規定が存在しているからです。個人情報保護法23条1項1号では「法律の規定」にもとづく第三者提供については本人の同意は不要とされています。提供が法的な義務と明記されているわけではない場合にこの条項が適用できるかどうかについて定まった解釈は無いようですが、当職の私見としては適用可能と考えています。そのため労災保険適用のための提供であれば、下請労働者の個別の同意が無くても、提供・受領可能でしょう。 もっとも賃金総額による概算方式も制定されていることを考え合わせると、下請事業者が労働者の情報を提供する義務まではないでしょうから、無理矢理提出を請求することはできないでしょうし、個人情報保護に関する契約や覚書の締結を交換条件として要求される場合もあり得るのではないかと思われます。