読書記録:西垣 通・河島 茂生「AI倫理-人工知能は「責任」をとれるのか」

この本で述べられているAIの倫理は、企業がAI導入において検討する「AI倫理」ではなく、「倫理」そのものとのAIとの関係。

僕が感得した要旨は「倫理を問題とできるのは自律的存在である(自由な意思決定をする)人間だけである。他律的存在であるAIには倫理的な責任の対象とはなり得ない。倫理は他者への共感によって共同体内で形成されるものである。共感をすることができないAIには倫理を形成する能力はない。しかし一般人はAIが自律的であるとか、共感をするとか誤解してしまうのだ。」という感じ。

僕が法律家だからなのかもしれないけれど(上述の要旨は刑法の責任論で頻出するので)、この点を主張するためにこの本に記述されている論述が必要なのかという気がする。あと途中は他説の批判が多くて、「第4の」あたりでは挫折して一部読み飛ばしてしまった。僕としては自説の根拠にもう少しページ数を割いてほしかった。当たり前的主張であっても、それの根拠を説得的に述べられることに価値があるのではないかと思う。

「AIの発展にAI倫理の議論が置き去りになっている」という主張なのだけれど、この本の話がAI倫理の検討の基盤をなすこととの関係が僕にはよくわからなかった。

後半の「練習問題」についても回答が何か独自の視点を提示しているのかと期待したのだけれど、そういった要素はなく、「自動運転」の項だけで挫折。

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