読書記録・レビュー:責任あるAI: 「AI倫理」戦略ハンドブック 保科 学世

AIのリスクを回避するためのマネジメントシステムの構築策の提案が書かれています。AIに関するマネジメントの体系化確立されているとは言えない現状で、マネジメントシステムの構成要素を列記できているところには価値があると思います。ただこの手の重厚長大なマネジメントシステムは、大企業のみ実施可能で、また、実際に実施する実益があり、中小企業の場合には、実施がそもそもむずかしいか、実施したところで本当にリスク回避に役立つのかという疑問があります。アクセンチュアの名前を冠した本で、文中にもアクセンチュアにおける実践内容が記載さているので、アクセンチュアにコンサル費用を払えるような規模の企業を対象としているという印象を受けました。
個人的な提言としては、中小企業の場合には、「AI倫理を実践するAIマネジメントシステム」を新たに構築するという考え方では無く、既存の社内の各種の枠組みにAIの要素を含めていくのはどうでしょう。例えば、多くの企業では何らかの形で品質マネジメントを行っているでしょうから、AI関連製品である場合には、AI用のフレームワークを発動させて、チェックをする形です。AIツールの社内導入であれば、購買プロセスの中に組み込むといった発想です。全社的なAIガバナンスを支援できる専門家というのはなかなか見つからないと思いますが、プロダクト単位でのAI適用の是非であれば、外部からの助言も得やすいでしょう。
個人情報保護関連では、プライバシーマークを取得している場合には、AI活用はJIS15001の規定体系の中に当てはまってきますので、仕組み作りはあえて不要では無いかと思います。
一方、この書籍でも述べられているところですが、教育はやはり重要で、企業の構成員がAIのリスクを認識し、都度アラートを鳴らせられる状況になっていることで、初めて各種のシステムが機能します。「誰が教育してくれるんだ」という話になってしまいますが、こういった手探りの話については、それこそ社内勉強会といったところからはじめるということでも良いと思います。開催のプロセスでリタレシーが上がるということも期待できますので。
関西の企業であれば、どうしても講師が見つからないという場合には、当職までご連絡くださいませ。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です