会社が従業員に貸与していた携帯電話が盗難されたり、紛失したりした場合に、責任を負うのは会社ですか?従業員ですか?また個人の携帯電話に会社の顧客の情報が入っていた場合はどうですか?
個人情報が漏洩した場合には、個人情報保護法上の責任と、プライバシー侵害が問題となります。携帯電話の紛失や盗難の場合には、アドレス帳に記載されている氏名、住所、電話番号や、メールボックスに保存されているメールアドレスや本文の漏洩の可能性があるでしょう。 まず漏洩した内容が、個人にとってのセンシティブな情報を含んでいる場合(思想・信条・私生活上の行状等)には、本人から紛失した従業員に対する損害賠償請求権(民法709条)が発生します。そして本人は会社に対しては使用者責任を追及できます(715条)。この場合会社は、従業員に対する監督を尽くしていたことを立証できない限りは責任を免れることができません。携帯電話が会社の所有にかかるものであればこの立証は非常に困難でしょうし、従業員の所有物であっても、例えば会社として私物の携帯電話の使用を固く禁止しているにもかかわらず、従業員が勝手に個人の携帯を使用していたことを立証しなければいけませんが、これも容易ではないでしょう。 個人情報保護法上の責任については20条の安全管理義務が問題となりますが、まず従業員個人は、そもそも個人情報取扱事業者に該当しませんから、責任を負うことはありません。会社の責任が発生するかについては、会社が従業員に対して携帯電話の取扱についての適切な教育、監督を行っていたかがポイントです。たとえば教育としては、携帯電話の紛失に対する注意喚起をしたり、メモリの内容が不要になった際にはすぐに消去するよう指導したりしていることが必要です。また監督としては、従業員による携帯電話の取扱状況を定期的にヒアリングしたり、規則に違反した従業員を発見したときに、その改善を実際に命令したりしていることが必要です。会社としてこれらの安全管理義務を尽くしているにもかかわらず漏洩したという場合には、安全管理義務違反を問われることはありま せん。これらの内容は、携帯電話が会社の所有物であるか、私物であるかは関係がありません。なお私物の携帯電話の使用が禁止されていて、かかる規則が周知徹底されているにもかかわらず、従業員がこれに違反して使用・漏洩したという場合には、安全管理義務違反を問われることはないでしょう。 もちろん従業員が訓戒・減俸など会社の内規上の処分を受けるかどうかは個人への法的な責任の発生の有無とは別問題ですので、別途労働法を鑑みた判断が必要です。